短歌講座・受講者作品と講評例
短歌5クラスの受講者作品の中から、優秀作とその講評をご紹介しています。
●短歌・馬場クラス
春一番庭木に止まりしヒヨドリが使わぬ筋肉駆使して堪える 青島由美子(神奈川県)
強風に使わぬ筋肉を駆使している―なかなかおもしろいとらえ方です。一生
懸命が筋肉に象徴されています。 草田照子講師選・評
老い夫と二人睦まじく生きる世のサスペンスは言ふアリバイなしと 渡辺征美(静岡県)
面白い!上句と下句の関係があまり合理的でないのもよく、それでいて何か二
人睦まじいことの不思議がリアル。 米川千嘉子講師選・評
ロキソニン夫に飲ませ吾も手の痛み止め塗る午前二時なり 杉岡尚子(三重県)
結句の具体が効果的です。老いることの苦しいひとこま 鎮痛剤を真夜中に夫
に与えている作者もまた手の痛みに耐えながらの行為。
松本ノリ子講師選・評
●短歌・佐佐木クラス
行く秋の日ざしに伸びをするごとく射水の川は流れをりたり 北澤道子(東京都)
ここでの大切は「伸びをするごとく」です。万葉時代の地名を上手に生かしま
した。 宇都宮とよ講師選・評
声高くボートの歌を捧げたり梅雨の晴れ間の西東京墓苑 矢島淨藏(東京都)
結句、友の墓前等と言わず、地名を言ったところが良く、又、上の句も情景が
浮かびますが、歌の曲名で、ボートの歌とわかるものがあったら、それを使い
たい。事実歌ったのではなくとも構いません。 斎藤佐知子講師選・評
少子化の進みゆく町にコンビニと塾だけが増え闇を照らせり 森田小夜子(静岡県)
ジャーナリスティックな着眼が生きています。地方都市の風景を通して、時代
の断面が切り取られています。「闇」という語彙はここではやや饒舌過ぎる印
象で、ここは「夜」ぐらいでいいと思いますが、全体としては成功したと言えま
す。 谷岡亜紀講師選・評
●短歌・高野クラス
冬空にスカンジナビア半島のかたちの雲が溶け出している 田中 泉(千葉県)
雲を地図に見立てるのは珍しくありませんが、成否はどこの地名を用いる
かだと思います。その意味でひとまず成功している作品となっています。
津金規雄講師選・評
その人の低きよき声忘れ得ず風の彼方の遠き青春 大竹茂子(神奈川県)
これはきちんと「低きよき声」とあるので、その他の部分がやや抽象的でも、
一首が支えられている感じがします。短歌として作品化することで、〈背景〉
にあるお気持ちも整理されるのではないかとお察しいたします。
大松達知講師選・評
●短歌・岡井クラス
朝漁の鰯はきれいターコイズブルーの縞が背中に光る 小柳啓子(神奈川県)
さわやかな気持のいい歌です。「きれい」と言ってここでいったん切れるの
でしょう。 視覚がよく働いていて、「ターコイズブルー」というくっきりと
した色が、歌の印象を鮮明にしました。 中川佐和子講師選・評
矮(ひく)き樹の細き枝にもあかあかと柿の熟して幼児等よろこびぬ 雲井 綾(東京都)
小ぶりの柿の木に実が熟して、丈が低いから子供の手にも届くのですね。て
いねいに柿の木の描写がされていて好感を持ちました。「幼児等」は単に「子
ら」でもよかったかもしれません。 田中 槐講師選・評
●短歌・「草木」クラス
五十七年伊予に住みたる吾が歌の合間合間に柑橘匂う 山田志慧子(愛媛県)
歌の合間合間に柑橘が匂う、とは詩情にあふれ秀逸な表現です。住んだ年月
の重さも感じられます。 大村博子講師選・評
わが胸に消ゆることなき影ありぬ父につきたる十歳の嘘 今井かをり(長野県)
年を重ねると却って幼い頃が思い出される。亡き父上へのまざまざとした思
いが切ない。 河上葉子講師選・評
